2013年第92回凱旋門賞・G1(6日、ロンシャン競馬場・芝2400メートル、やや重=17頭立て)
3大世界最高峰のG1レースが、ロンシャン競馬場で行われた。
2012年2着の雪辱をめざし臨んだオルフェーヴル(牡5歳、栗東・池江泰寿厩舎、スミヨンジョッキー)は、
中団から末脚を繰り出したが、フランスの3歳牝馬トレヴを捉え切れず、またも2着。
日本調教馬の初制覇は、ならなかった。
2013年の日本ダービー馬キズナ(牡3歳、栗東・佐々木晶三厩舎、武豊ジョッキー)は、
早めに追い上げたが、4着に終わった。
レース後、オルフェーヴルのオーナーサイドサンデーレーシング代表吉田が、
有馬記念(12月22日、中山)を最後に引退すると発表した。
凱旋門の扉は、またしても重く閉ざされた。
道中は中団を追走し、オルフェーヴルに馬群の間から“ヴィクトリーロード”がちらついた。
ロンシャンに詰めかけた5000人を以上の日本のファンが、遠く日本から送られたエールが背中を押すが、
前を行く無敗のフランスオークス馬トレヴとの差は詰まらない。遠くなっていく世界の頂点の座。
今年のロンシャンが、旗を振る日本のファンの深いため息に包まれた。
昨年の首差から5馬身差と着差を大きく広げられた2着。
「完敗ですね。精いっぱいやったし、力は出し切った」と池江調教師はかみしめるように言葉を絞り出した。
「自分としては、いい騎乗ができた。斤量差(5キロ)が大きかった。
残り350メートルでトレヴがリードを奪ってしまったので、追いつけないと思って2着を優先した」とスミヨン。
昨年の惜敗後、ともに悔し涙を流したコンビによる2年越しの雪辱はならなかった。
惜敗に終わった昨年から1年。一から作り直してきた。
1頭になると気を抜き、内によれる悪癖を改善するため、
栗東では3月末の大阪杯優勝後にハミ受けの修正のためCウッドチップコースに入れ、
角馬場ではフラットワークを行った。8月24日のフランス入り後も
昨年の直線コースではなく、周回コースを選択。
1頭だけ抜け出す併せ馬を何度も繰り返して確認作業を重ねてきた。
凱旋門賞を勝つことだけを見据えて1年、努力を積み重ねてきた“チーム・オルフェ”。しかし、1920年の創設以来、欧州の名馬だけが名を連ねてきた壁は今年も厚かった。「やはり重い扉でしたね。昨年は一瞬、開けることができたが、ゴール前で閉まってしまった。今年は扉に手をかけることすらできなかった。欧州の層の厚さを見せつけられました」と池江調教師。過去25年、60頭が翌年も凱旋門賞に挑んだが、勝った馬はいない。そんな不吉なジンクスもはね返すことができなかった。
オルフェーヴルにとっては最後の凱旋門賞となることが濃厚。ただ、池江調教師の挑戦は決して終わったわけではない。「勝ちたかったけど力不足でした。また強い馬を育てて、勝つまで挑戦しつづけたいと思います」。またひとつ重ねた悔しさと闘志が大きな原動力になるはず。2年連続で挑んだ貴重な経験を糧に、今度こそ悲願を達成するために再び戻ってくる。
◆ラストランで日本のファンに感謝 オルフェーヴルは、年末の有馬記念(12月22日、中山)を最後に、引退することになりそうだ。レース後、オーナーであるサンデーレーシングの吉田俊介代表は「この後は、有馬記念を考えている。それがラストランになるでしょう」と見通しを語った。
再び2着に終わったレースについては「フォワ賞の勝ち方が良かったので、チャンスがあると考えていたが、トレヴみたいな強い馬が出て来る。簡単じゃない」と振り返った吉田代表。2年ぶりの参戦となる暮れのグランプリで、日本のファンに感謝の勝利を届けるつもりだ。
◆レースVTR 逃げたジョシュアツリーがつくった流れを、中団やや後方からオルフェーヴル、後方2番手からキズナが追走。フォルスストレートでキズナが早めに仕掛け、残り500メートルでは馬群でもまれるオルフェーヴルより前に出た。直線は2頭が並んで末脚を伸ばしたが、ワンテンポ前に抜け出したトレヴを捕まえ切れず、悲願達成はならなかった。
◆凱旋門賞 1920年に、フランスの第1次世界大戦の勝利を記念して創設。毎年10月の第1日曜日に、パリ郊外にあるロンシャン競馬場で行われる。フランス調教馬が圧倒的に強く、今回で通算65勝目。以下、イギリス12勝、アイルランド7勝、イタリア6勝、ドイツ2勝。欧州所属馬以外の優勝はない。今年の総賞金は480万ユーロ(約6億2400万円)で、1着賞金274万2720ユーロ(約3億5655万円)。